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TSUKUBA FRONTIER #003:ひとつの分子が世界を帰る ~基礎化学はチャンスに満ちた世界~

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数理物質系 関口 章(せきぐち あきら)教授

1952年 群马県生まれ
1974年 群马大学工学部応用化学科卒业
1978年 筑波大学研究协力部研究协力课文部技官
1981年 筑波大学化学系助手(理学博士)
1985年 米国ウィスコンシン大学化学科博士研究员
1987年 东北大学理学部助教授
1996年 筑波大学化学系教授
2004年 筑波大学大学院数理物质科学研究科教授
2011年 筑波大学数理物质系?科学域教授、同大学大学院数理物质科学研究科、学际物质科学研究センター教授
2012年 ケイ素化学协会会长

[主な受赏]
滨叠惭科学赏?フンポルト赏?アメリカ化学会赏?日本化学会赏


実はとても身近な元素、ケイ素

 地球の表层部、つまり生物の生活圏内で一番多い元素は酸素、次がケイ素です。地殻を构成する岩石の主成分はケイ素で、酸素と结合した状态で存在しています。人类は岩石を使って道具を作り発展してきました。そう考えると、人间とケイ素は人类诞生以来の长い付き合いだといえます。
 しかし、人间がケイ素を本当に有効な形で使えるようになったのはほんの100年ほど前。ケイ素と酸素の结合が非常に强く、それを絶つことが难しかったためです。ケイ素を単结晶として得る方法が确立され、多様な有机ケイ素化合物が合成できるようになって加速的に応用が広がり、今では太阳光発电やスペースシャトル、スポーツウェア、建筑材料、エレクトロニクスなど、あらゆる用途で利用され、私たちの生活を豊かにしています。

23年かかったケイ素ーケイ素叁重结合

 元素周期表を見ると、ケイ素は炭素と同じ族(第14族元素)です。一般に、同族の元素はよく似た化学的性質を持っていますが、ケイ素と炭素は全く異なる挙動を示します。そのひとつが多重結合の生成。炭素の場合は、炭素同士で二重結合や三重結合をつくり、エチレンやアセチレンができます。しかしケイ素は原子半径が大きく結合距離が長いことから、多重結合は形成できないというのが常識でした。  ところが1981年にアメリカで、ケイ素同士の二重結合が合成されるという大きなブレークスルーがありました。これが、ケイ素同士の三重結合(ジシリン)実現への挑戦を始めるきっかけです。三重結合は、高分子や環状化合物など、さまざまな化合物を合成するための出発となる化学結合です。そこにケイ素が含まれることで、新しい材料開発の可能性が格段に広がります。
 この研究が実を结んだのは23年后、2003年のクリスマスのことでした。それまで、アセチレンに见られるように、多重结合における原子间の电子分布は対称的であると考えられていましたが、むしろその方が稀であって、本来は非対称であるという概念を初めて提唱し、実际に、安定なジシリンの合成に成功、実験的にこの概念を証明したのです。

化学の歴史に名を刻む

 ジシリン合成のニュースは、従来の化学结合论を完全に覆すものとして、サイエンス誌や化学の専门誌はもとより、ニューヨークタイムズなどの一般纸も含めて世界中に伝えられました。この业绩は化学の教科书を书き换えました。その中でもよく知られている「翱谤驳补苍辞尘别迟补濒颈肠蝉」(奥颈濒别测-痴颁贬発行、2006年版)では化学年表にも记载され、化学研究の歴史に新たなマイルストーンを筑きました。
 科学の进歩や新たな発见によって教科书が书き换わることはあり得ないことではありません。しかし、化学结合のような基本的な概念が変わるというのは、それに関连する研究すべてに影响を及ぼすわけですから、とても重大な出来事です。

新タイプの蓄电池ヘ

 研究生活のほとんどの时间をつぎ込んだジシリン合成の研究では、その过程でも重要な研究成果が生まれています。ゲルマニウムやケイ素のカチオン(阳イオン)を合成したことです。これらも1980年代から存在の可能性が盛んに议论されていましたが、この研究が1997年にサイエンス誌に掲载され、论争に终止符が打たれました。
 カチオンが电子1个を受け取るとラジカルに、ラジカルが电子1个を受け取るとアニオン(阴イオン)になります。ケイ素の场合、この反応は电子のやりとりによって容易に、しかも可逆的に起こり、それぞれの状态が安定的に存在できます。そこで现在は、公司と共同で、この性质を利用した蓄电池(ラジカル电池)の开発に取り组んでいます。
 パソコンやハイブリッド车などに使われるリチウムイオン电池は、长时间使用ができる反面、出力を上げると発火の危険があります。一方、ケイ素ラジカル电池は电子の移动だけで反応が进むので充电が速く、安全に大出力が得られることから、新しいタイプの蓄电池として期待されています。

大学は「共育」の场

 甚础化学の魅力は、たったひとつの分子で世界を変えられること。そのチャンスは谁にでもあります。今までなかったものをつくる。ナイロンやポリアセチレンがそうだったように、そこから无限の応用が拓け、飞跃的な技术革新がもたらされるのも梦ではないのです。
 しかしひとりでそれを実现することはできません。先述の蓄电池开発もそうですが、甚础研究に携わる人こそ、その成果を活用できる分野の人々とのコラボレーションが大切です。化学そのものの学问的な面白さもありますが、自分の研究フィールドだけに闭じてしまうと、新しい知识や考え方に触れることができず、贵重なチャンスを见逃してしまいます。
 その意味では学生の力も不可欠です。同じ研究者として学生から学ぶこともたくさんあります。大学は教员と学生が共に成长する场所。「教育」ではなく「共育」だと考えています。ひとつだけ学生にアドバイスするとすれば、教科书に书いてあることがすべてではないということ。それはいつでも覆る可能性があるのです。


 

(文責:広報室 サイエンスコミュニケーター)