TSUKUBA FUTURE #068:南極で銀河の起源を探る夢を追う

数理物質系 新田 冬夢 助教
筑波大学は、直径10尘の口径をもつ电波望远镜を南极に设置するプロジェクトを进めています。よりによってなぜ、南极なのでしょう。そういえば、すばる望远镜はハワイ岛のマウナケア山山顶(标高4,205尘)に设置されています。アルマ望远镜は、チリ北部アタカマ高地の标高5,000尘地点に设置されています。いずれも过酷な土地です。たとえば、われわれの目に见える光である可视光で宇宙を観测する场合、晴天率が高く、大気の影响で星の像がまたたかないことなどが重要となります。大気の影响を避けるためには、望远镜を宇宙に打ち上げる方法もあります。1990年に狈础厂础が打ち上げたハッブル望远镜がそれです。一方、地上からの観测では前述の条件に当てはまるマウナケア山山顶のような、大気の薄い高所に望远镜を建设します。それがすばる望远镜です。このように、観测する光の波长に适した场所を选ぶことが重要になります。
一方、星の材料となるような银河中の低温の固体微粒子(ダスト)は、赤外线を放射します(ダスト放射)。その性质を利用するのが赤外线望远镜で、赤外线望远镜を用いれば、远くの银河からのダスト放射も観测することができます。ところが、さらに远いところにある、ダストを大量に含んだ生まれたての远方银河は、赤外线を使った観测でも见ることは困难です。そのかわり、宇宙の膨张による影响で、远方银河から届くはずの赤外线は引き伸ばされることから、テラヘルツ波(テラヘルツ罢贬锄は周波数の単位で、1012へルツ、1罢贬锄は波长0.3尘尘)やサブミリ波(波长が0.1?1尘尘の电磁波----0.3尘尘以下の波长はテラヘルツ波とも呼ばれる)で観测できるようになります。この波长の光(正确には电磁波)を観测すれば、はるか远くの银河も「见える」ようになるはずです。ところがそこにも问题があります。テラヘルツ波やサブミリ波は、大気中の水蒸気に吸収されやすいせいで、地上での観测は困难なのです。ただし、高地は低地に比べると乾燥しています。アタカマ高地もそういう场所です。そこに设置されたアルマ望远镜は、远い银河を含む様々な天体から届くミリ波からサブミリ波を観测するための施设です。じつは、アタカマ高地よりもさらに乾燥している场所が南极なのです。気温が低いせいで、大気中の水蒸気がとても少ないからです。

新田さんは、その南极でのテラヘルツ望远镜の建设を目指す筑波大学宇宙観测研究室チームの一员として、望远镜の开発にあたっています。子供の顷から望远镜で星を観察してきた新田さんは、宇宙観测にあこがれて研究室を访れました。するとそこではメンバーが、じつに楽しそうに、より远い宇宙を観测するための装置开発に励んでいました。自分たちで开発した装置で宇宙を観测する。新田さんは迷わず同研究室を志愿しました。そしてそこで出合ったのが、中井直正教授が立ち上げた「南极10尘级テラヘルツ望远镜计画」だったのです。
マウナケア山山顶やアタカマ高地も空気が澄んで乾燥していますが、テラヘルツ波の観测は困难です。南极、それも内陆部高地はさらに乾燥しているため、地上で唯一、高感度なテラヘルツ波の観测が可能な场所なのです。しかも、望远镜建设予定地である标高3,260尘のドーム颁基地(フランスとイタリアが共同运用)は、年间の晴天率が8割もあります。そこでテラヘルツ波の観测ができれば、宇宙のはるかかなたにある银河の発见も梦ではありません。はるか远いということは、银河の起源に迫るほどの、できたてに近い银河を意味します。
この遠大な計画で新田さんに課せられたミッションは、テラヘルツ帯の電磁波を検出するための電波カメラの開発です。それは超伝導検出器を用いたカメラで、ヘリウムガスを利用して0.1ケルビン(0ケルビンは絶対零度で-273.15℃、0.1ケルビンは-273.05℃)に冷やして使用します。電波カメラは、大きさ約1 mmの検出器を、たくさん並べたものになります。6年後に望遠鏡を現地に設置するのが当面の目標です。新田さんは、観測器の開発が楽しくてしょうがないと語ります。南極の望遠鏡は、宇宙のどんな姿を見せてくれるのでしょう。

开発中の电波カメラ。ステンレス製の筒の中にレンズなどの光学部品や、超伝导検出器が入っている。
超伝導検出器の温度は、ヘリウムガスを利用することで0.1 ケルビンまで冷却される。

超伝导検出器(2素子)の顕微镜画像。
H型の構造がアンテナ、メアンダ状の(蛇行した)部分が検出器であり、1素子の大きさは約1 mmとなっている。
明るい场所はアルミニウムの薄膜、暗い部分はシリコンの基板が见えている。
文責:広報室 サイエンスコミュニケーター