TSUKUBA FUTURE #047:掘る!測る!つなぐ! ガテン系研究者の災害情報学

システム情報系 川村 洋平 准教授
直径3?4肠尘、长さ20肠尘ほどの掘削用ドリル。よく见ると、ドリル部分が二段阶になっていて、それぞれが逆回転するしかけが组み込まれています。川村さんが発明した二重反転ドリルです。一方向だけに回転する従来のドリルよりもずっと楽に掘削できる优れものです。ドリルで穴を掘り进めるには、上から强い力で押さえつけないと空回りするだけで前进しません。それに対して、逆回転する2つのドリルだと、互いの反発力を打ち消しあうため、强い力で押さえつけなくてもスムーズに直进します。このドリルにヘビのようにグニグニと动くロボット机构を付けた上で、土を採取する窓や、土壌の成分や埋设物を検知するセンサーなどを装着すれば、自在に掘り进みながら地中の状态をモニタリングできる「モグラロボット」が実现します。ロボティクスの分野では、ドローンに代表されるように、上空?海中?地表の自动探査は进んでいます。それなのに、地中にはほとんど目が向いていませんでした。しかし、建筑工事前の地盘调査や、地滑りの原因となる地中の水分调査、地中の有害物质量を测る环境アセスメント、さらには、砂の层に近いといわれる月面の掘削など、モグラロボットの応用范囲は无限大です。その可能性を开くのが、川村さんが発明した二重反転ドリルです。

これだけでも注目を集める成果ですが、掘削は川村さんの研究テーマのほんの一部です。川村さんは、もともとは海洋学者を目指して大学に进みました。ところが、海上実习でひどい船酔いを経験し、その梦を断念するほかなくなりました。そこで、それまで学んだリモートセンシングの知识を役立てようと选んだのが、防灾用のセンサー技术を扱っていた资源探査の研究室。鉱山で使う重机の异常诊断を行う通信方法の研究をきっかけに、地盘、机械、计测、通信といった幅広い分野を网罗していきました。筑波大学に所属した后、新天地を求めて、鉱山学のメッカとして知られるオーストラリアのカーティン大学に転身。そこでは、坑夫さながらの日々を过ごしました。カルグーリーという世界最大の露天掘り鉱山の町にあるキャンパスで、発破技术などの他、坑内の环境モニタリングや防灾システムの研究教育に携わったのです。
そして2015年の春、筑波大学に戻って立ち上げたのが、ジオコンピューティング研究室。今までの知识や経験をフル活用できる分野です。川村さんが构想する灾害情报学は、灾害が起きたときに、避难や復兴に必要な情报を迅速に集め、被灾者や现地の関係者に的确に届けるためのシステムです。东日本大震灾では、携帯电话のインフラがダウンしたり、ネット上で真偽のはっきりしない情报が飞び交い、肝心の被灾者がほしい情报を得られないという状况が起こりました。インフラの復旧や无秩序に拡散した情报を整理するには时间がかかります。それを待つよりも、被灾地域内で简易ネットワークを构筑し、人?物资?环境などの情报を现地で収集?共有する方が、现场の当事者にとって有用であることは明らかです。

目下、大学构内で二重反転ドリルの试运転中だという。
そのシステムを可能にするのが「ジグビー(窜颈驳叠别别)」という近距离无线通信规格です。伝送できるデータ量や通信范囲は小规模ですが、中継点(ノード)が安価で、设置も简単です。自治体などで平时から準备しておけば、非常时には自治体や消防?警察の职员がノードを设置するだけで、自律的にネットワークが形成されます。携帯电话やセンサーなどもつないで、避难所の様子や救助要请、さらには地盘や环境の変化をリアルタイムに集约することが可能です。それ以外にも、鉱山内での人や物资の动き、地滑りや落石、老朽化したインフラなど、状况を常にモニタリングして异常や危険をいち早く察知することが求められる场面への导入も考えられます。

筑波大に戻ったのは、オーストラリアの鉱山町で、つくばの町が无性に恋しくなったからと语る。
ジグビー自体は2004年に作られた规格で、主にファクトリーオートメーションなどのネットワークに用いられ、灾害対応や防灾向けの応用例はまだありません。川村さんは、さまざまな分野の研究者と协力しながら、つくば地区で、宅地?道路?森林など环境别の通信状态を调査し、避难所の位置も考虑した最适なノード设置场所を示すマップ作りを进めています。间もなく実証実験にもとりかかる予定です。灾害时に真に役立つ情报管理システムを社会に実装したい、その思いが研究の原动力です。
文責:広報室 サイエンスコミュニケーター