TSUKUBA FRONTIER #022:グローバルリーダーの条件 多様性の中で柔軟に行動できる人材を育てる
ビジネスサイエンス系 永井 裕久(ながい ひろひさ)教授
博士(商学)庆应义塾大学
现在、国际経営プロフェッショナル専攻教授、附属学校教育局特命补佐。
クランフィールド経営大学院、北京大学光华管理学院、ハワイ大学経営大学院、フィリピン大学労使関係研究所、イズミル経済大学の客员教授を歴任。専门は组织行动论。「异文化组织における人间の意识や行动」を実証的に研究する研究课题に取り组む。グローバル人材开発に関する着书、论文多数。
スペシャリストとしてのグローバルリーダー
产业能率大学が2017年に実施した调査によると、日本公司の新入社员の6割が、海外で働くことを望まないそうです。しかし公司自体はグローバル化の流れに逆らうことはできません。そして、环境や文化の异なる土地でビジネスを成功させるには、その原动力となる优れたリーダーが不可欠です。
公司が海外に进出する际、国内でリーダー実绩のある人が、现地で指挥を执るのが当然のように思われます。しかし国外に出たとたん、それまでの常识や惯习が通用しない状况に直面することは少なくありません。その时いかに临机応変に、対応できるかが大切です。日本でも组织のトップを外部から登用する例が増えていますが、社内の定期的な人事异动と年功序列により育成されたマネージャーにはない资质を备えたトップリーダーが求められていることの証といえるでしょう。グローバルリーダーはスペシャリスト。その育成には専用のプログラムが必要なのです。
リーダーシップを学术的に捉える
国内と海外の一番の违いは多様性です。リーダーは、文化や习惯、考え方の异なる人々から成る组织をマネジメントし、それぞれの能力を见极め适材适所で活用しなくてはなりません。想定外のトラブルにも柔软に対応し、目标に向かっていく精神的なタフさも必要です。大切なのは、不确定要素の高い环境の中で、柔软に考え、やりぬく力。これは、従来の日本型の画一的なエリート像とは异なるものです。
このような人材像は学术的な実証研究から导き出されています。すでにグローバルリーダーとして高い评価を得ている人たちを対象にした调査结果から、异文化环境で直面した问题の解决のために有用なコンピテンシー(适性や行动パターン)には、ある共通性が见えてきます。
これらのコンピテンシーは、4つの次元:S(Search 問題発見)、P(Plan 解決案立案)、D(Do 実行)、L(Learn 学習)にまとめることができます。さらに、この4つの次元を効果的に活用するためには、「メタ認知」、すなわち自分の置かれている状況や行動を客観的に認識する能力が不可欠です。優れたリーダーは無意識のうちにこれらを実践し、経験値を高めながら、多様性や変化への対応力や、探求的?自律的に問題解決に臨む姿勢を獲得しています。
グローバルリーダーの育て方
厂笔顿尝サイクルやメタ认知といったコンピテンシーは、机上で学ぶものではなく、半分は生まれながらのパーソナリティ、もう半分は环境によって形成されると言われています。従って、グローバルリーダー育成の键は、日常的にグローバルな环境に身を置き、実践的な训练を积んで、意识的にこれらのコンピテンシーを身につけることです。
日本では、そのようなプログラムを提供するのは大学院、いわゆるビジネススクールです。本学の社会人大学院で开设している国际経営プロフェッショナル専攻もその一つ。约30名の社会人学生の3分の1程度、教员の过半数が外国人で、授业も英语で行われます。さらに海外に10校ほどある提携校へ短期留学して授业に参加したり、シリコンバレーの公司などを访れ、现地の人々とのディスカッションを通して、グローバル感覚を养います。修了生の多くが、実际に海外赴任をしたり、転职してキャリアアップを図るなど、着実にグローバルリーダーへの道を歩んでいます。
早期教育のススメ
しかしながら、社会人になって初めてこのような教育の必要性に直面するというのは、学校教育にも課題がありそうです。確かに現状の学校教育には、多様性やグローバル感覚を学ぶカリキュラムは含まれていません。SGH(Super Global Highschool)指定校でも、グローバル活動の多くは総合学習や課外活動に位置付けられており、グローバル対応能力の学習時間は十分とはいえないでしょう。
高校生対象に调査をしたところ、厂骋贬指定校でグローバル活动のカリキュラムを主体的に选択する生徒は、そうでない生徒に比べて海外への意识が格段に高く、卒业までにその差は顕着に広がります。多くの大学がグローバル教育に力を入れていますが、それでは遅いのです。もっと早い段阶で海外交流や体験活动の机会を提供することが求められます。
そこで近年は、本学附属学校教育局特命补佐として、高校生向け「グローバルリーダーズ?プログラム」の开発に注力しています。北米やアジアの大学と协働し、英文のアカデミックレポートの书き方やプレゼンテーション技法を学んでから、海外の大学キャンパスで研修し、その成果を英语で発表するコースです。研修当初はたどたどしい英语でディスカッションしていた生徒たちが、帰国后に堂々とプレゼンテーションできるまでに成长します。
オリジナリティーを评価する
このようなプログラムを全ての高校生に受讲してもらうことは无理だとしても、资质や意欲のある生徒がチャレンジすれば、その机会が得られるような环境整备は进めるべきでしょう。例えば、国立大学の附属高校として、各都道府県に1校ずつインターナショナルスクールを设置すれば、通学や学费面でも次世代グローバル教育はずいぶん変わるはずです。
インターナショナルスクールはもともと、帰国子女や一时的に日本に赴任している外国人の子弟のための学校です。教育方针も日本の学校とはかなり异なっており、正しい答えよりも自分の考えをしっかりと述べること、オリジナリティーが评価されます。一人ひとりの个性、すなわち多様性を尊重するということです。
そこで问われるのは教育メソッドです。模范解答とは别の轴でさまざまな个性を适切に评価し、多様性に富んだ教室をマネジメントすることが求められますから、教员养成においても新しいプログラムが必要です。そのひとつとして本学は、平成29年度、30年度の文部科学省「新时代のための国际协働プログラム」で採択された事业により、高校教员のための研修プログラムの开発に着手しました。海外の大学と协働して、日本の高校用に英语による授业案を作成し、それを実际に高校生向けの海外研修プログラムとして开讲する、というサイクルモデルの実践を进めています。
雇用が流动化し、転职や起业する生き方も许容される社会になってきました。その先にあるのが多様性や変化にあふれた世界。グローバルリーダー育成は一层、重要性を増しています。
グローバルリーダーズ?プログラム
本学附属学校教育局は、文部科学省厂骋贬(スーパーグローバルハイスクール)事业の全国123指定校、56アソシエイトの干事校管理机関としての管理业务に加え、中高校生向けの海外研修を含むグローバルリーダーズ?プログラムを研究开発?実施しています。これまでに、筑波-ブリティッシュ?コロンビア大学(カナダ)、筑波-香港大学、ジュニアの各プログラムを开讲し、今夏は、筑波-ハワイ大学プログラムを新设します。
(文責:広報室 サイエンスコミュニケーター)
(2018.7.11更新)