TSUKUBA FUTURE #094:色彩の力でまちを元気に

芸術系 山本 早里 准教授
まちを见回すと、様々な色があふれています。建筑物や案内板、広告など、それぞれの色使いがありますが、単にきれいな色、目立つ色だから良いというわけにはいきません。人々に不快感を与えず、全体として调和がとれていることが大切です。これが环境色彩。高层ビルの建ち并ぶ都会や、歴史的建造物が多い古都など、地域の性格によって调和する色も异なります。山本さんは、地域が元気になるような色、まちの环境色彩を研究しています。
その一例が、学内にある学生宿舎です。2011年のリニューアルに伴って、外壁の涂装も行いました。もともとは典型的な白のコンクリート壁でしたが、山本さんは、西川洁学生担当副学长(当时)监修の下、その一部をオレンジや黄色などにすることを提案しました。建物の色としてはやや奇抜ですし、复数の色に涂り分ける作业も手间がかかります。それでも実际にやってみると、これらのアクセントカラーによって宿舎の雰囲気は一気に明るくなりました。このような方法は、老朽化した団地の再生などにも応用できます。建物全体を建て替えるとなると大がかりな工事が必要ですが、配管などの设备と外壁の変更なら、工期も费用も少なくて済みます。壁の色を変えるだけで、そこに住む人々の気持ちが前向きになり、コミュニティも活性化されるとしたら、まちづくりとしては愿ってもないコストパフォーマンスになります。学生宿舎のデザインは、建物再生の新しい试みであり、魅力的な景観に加えて、学生の刺激にもなると评価され、この年、公共の色彩を考える会主催の「公共の色彩赏」を受赏しました。

外壁を一新した学生宿舎。2011年度の「公共の色彩赏」を受赏した
このアイデアは、スペインのジローナという都市がヒントになっています。川に面した建物の色がカラフルなことで有名で、その街并みを见に、多くの観光客が访れます。しかしそこは、かつては低所得者が集まる荒んだエリアでした。自治体が伤んだ建物を改修することになり、同时に壁を明るい色に涂り直したところ、まちのイメージが一変しました。川の対岸にあった商业施设も、これに合わせるように色彩を変えたところ、それが评判となりました。色のおかげで、思いがけず、まちおこしにもなったというわけです。
山本さんが西川元副学长と手がけた环境色彩は、つくば市内にもあります。つくば市の中心部を南北に贯くペデストリアンデッキ。散歩やジョギングなどで多くの市民が利用する游歩道です。そのうち、つくば駅周辺の6办尘の范囲に、周辺を案内するサイン约30基が设置されています。グレーや黒を基调にしたもので、现在地や駅までの距离などがすっきりと表示された案内板です。なにげなく置かれているようでいて、そこにはさまざまな工夫が施されています。グレーの色ひとつでも、周囲に建物が多いエリアと、木々が茂るエリアのどちらでも见やすいトーンのものを选びました。サインの大きさや情报量、设置场所や向きも、模型を作ったり、现地を実际に歩き回ったりして慎重に设计しました。利用者に适切な情报を提供しつつ、まちの雰囲気と调和した絶妙のデザインを心がけました。私たちは、それとは意识しないまま、考え抜かれた环境色彩の中で暮らしていることになります。

つくば市のペデストリアンデッキに设置されているサイン(案内标识)
山本さんが环境色彩に関心を持ったきっかけは、ヨーロッパの美しい街并みでした。その美しさはどこからくるのでしょうか。天井の高さや窓の大きさにより、そこから受ける圧迫感や开放感がちがいます。同じ色でも、周囲の色との関係で印象が変わります。环境や色彩が与える心理的影响を学んだことで、まちと色への兴味が広がりました。特に大きな建物は、外壁といえども、そう简単には涂り替えられません。安易に採用された公司のコーポレートカラーが、街并み全体のたたずまいを损ねてしまう场合もあります。ファッションや商品パッケージなどは短期间でデザインが変わるものですから、大胆な色での冒険もできます。しかし、まちを形作る建筑物は、色についても数十年先まで见据える必要があります。
そのためには、地域に特徴的な色を见つけることも大切です。その土地で产出する天然颜料や植物由来の染料などが、伝统的に建物や家具の中に使われている事例は珍しくありません。上述のジローナも、そこで採れる昔ながらの天然颜料の色がベースになっています。だからこそ、地元の人々が爱着を感じ、まちの力を引き出したのです。人工颜料が普及し、天然素材は逆に高価なものになっていますが、それらは地域特有の生活の知恵、そして物语でもあるのです。山本さんは、そういった素材を掘り起こすことで、地域ごとの色彩と活力を再発见していこうとしています。
文責:広報室 サイエンスコミュニケーター
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