TSUKUBA FUTURE #031:成功する企業経営のセオリーを科学する

ビジネスサイエンス系 立本 博文 准教授
市场はグローバル化し、ビジネスのスタイルも変化しています。ここ数十年の流れとしては、一社で研究开発から製造、贩売まで行う形から、复数の公司が分业し、グループとして利益を得る方式への転换があります。立本さんは、刻々と変わりゆくビジネスの世界で「胜つ」ための戦略を研究しています。
立本さんが着目しているのは「ビジネスエコシステム」と呼ばれる产业构造です。シリコンバレーに代表されるように、知识や情报をオープンに共有してイノベーションを起こす方式です。公司が集まり、自律的?分散的なネットワークを形成して成长します。ここではオープン标準や知财権(特许や着作権等)が重要な武器になります。このようなモデルは情报通信を始め、半导体、エネルギー、バイオ创薬などの业界にも広がっています。
この产业构造では、公司同士が共存しながらも、富は偏在するという特徴があります。イノベーションにより独占的な利益を得る公司(プラットフォーム公司)と、その公司が提供する「场」で事业を行う公司があるわけです。例えば、アップル社は颈笔辞诲/颈笔丑辞苍别という场を提供し、アプリやコンテンツ开発は谁でも参入して利益を上げることができます。アップル社のような公司をプラットフォーム公司といいます。产业规模が大きくなると、プラットフォーム公司には膨大な利益が集まり、谁もがその影响力を无视できなくなります。つまりビジネスエコシステムでは、「いかにしてプラットフォーム公司になるか」あるいは「いかにプラットフォーム公司から自社の利益を守るか」が重要になります。それには、従来のような品质やコストとは别次元の考え方が求められます。
一方、自动车产业は、このようなビジネスエコシステム型の产业构造とは异なる方向で成长してきました。しかし、近年の自动车产业は、情报通信やエレクトロニクス产业との连携が不可欠です。自动运転技术などがそのよい例です。全く异なるタイプのビジネススタイルが协働するとき、それらがどのように机能するのか、立本さんは兴味深く観察しています。

ビジネスエコシステムは「食う食われる」の関係ではない。
相互依存の関係の中でニッチを确保することが大切と、热く语る。
ビジネスエコシステムで、もうひとつの注目すべき点は、特许などの知的财产(知财)を活用する経営戦略です。特许は技术情报をオープンにしながらも、排他的な使用権を得ることができる権利です。知财は公司の重要な竞争力。使い方しだいでビジネス上の优位に立てるはずです。しかし日本の公司は、国内での特许出愿数はとても多いものの、海外出愿や権利化にはなかなか至りません。国内の特许诉讼が少ないことや、知财管理と経営の部门が连携しにくい组织构造など、日本特有の事情もありますが、ビジネスツールとして知财の価値を捉えなおし、経営戦略に活かす方法论を探る必要があると、立本さんは语ります。
立本さんがビジネスエコシステムに注目したきっかけは、开発プロジェクトマネジメントの研究からでした。日本のソフトウェア产业がなぜ低调なのか、プロジェクトマネジメントの観点から分析してみると、ソフトウェアの品质は高いのに、経営层の戦略が适切でないために、成果に结びついていないことがわかりました。日本では、「経営」は现场で経験的に学ぶものという意识が强く、教育や人材养成はあまり行われてきませんでした。しかし、ビジネスエコシステムの登场は、公司の规模や経験に関わらず戦略しだいで成功できることを示しています。そこで立本さんは、実际のビジネスに役立つ効率的な経営のしくみを、科学的な理论として提示しようと考えました。

数学、特に统计学はビジネスサイエンスの重要なツール。
ビジネスの现象を捉えるには、ケーススタディと统计研究の2つの手法を使います。ケーススタディでは、対象とする公司に直接赴き、経営者や各阶层の担当者への闻き取り调査や、工场など作业现场の観察、时には现场で作业の体験もします。さらに、ライバル会社や取引先などにも同様の调査をします。さまざまな立场の人から彻底的に话を闻くと、个人のバイアスや社内?业界だけで通用する常识なども见え、公司の実态が客観的に理解できます。统计学からのアプローチでは、公开されているデータベースやアンケートから、ビジネスの状态を反映する要素间の法则性や因果関係を探します。ケーススタディと统计分析の情报を组み合わせ、全体像を把握します。実験で确かめることのできない分野だからこそ、多角的な分析を駆使することでバイアスや矛盾を排除し、结果の妥当性を确保します。
「カリスマ経営者」や「伝説の颁贰翱」などと形容される経営者がいるように、ビジネスには言叶では表せない「センス」も确かに必要です。梦に対する情热が重要になることもあります。しかし、だからといって科学的思考が必要ないということではありません。経営において重要なことの大部分はサイエンスであり、事例分析やディスカッションを通して学ぶことができます。それは、経営に携わる人だけでなく、エンジニアにとっても有用なスキルです。経営企画のプロとしてビジネスの世界で差をつけるカギだというのが立本さんの主张です。
文責:広報室 サイエンスコミュニケーター