TSUKUBA FUTURE #120:地球の鼓動を聞き分ける

生命環境系 奥脇 亮 助教
地球の表面はプレートと呼ばれる岩石の层(厚さ约10~100虫3314;)で覆われています。主要なプレートは十数枚で、その境界ではプレート同士の衝突が起きたり、片方のプレートの下にもう片方が沉み込んだりしています。その结果、地下の岩盘には押したり引いたりする力が加わります。すると、岩盘がある面を境に急激にずれ动くことがあります。これが地震で、岩盘のずれを地震破壊、ずれた面を断层、ずれた领域を震源域と言います。日本が地震国なのは、周辺に复数のプレート境界があり、地下の岩盘に复雑な力がかかっているからです。
奥脇さんの主な研究テーマが「地震破壊の成长过程の解明」です。国内外の地震観测网で记録された地震波形から、どのような形状の断层がどのようにずれ动いたのかや、それに伴なってどのような地震波が、いつどこで発生したのかなどを解析していくのです。
一般的な震源过程解析では、断层形状を仮定し、観测された地震波形がそのモデルで説明できるかどうかを、コンピューターを使って调べます。しかし、仮定がうまくできていないと、断层の奇妙な动きや微妙な动きが见つからないことがあります。このため、奥脇さんは、恩师で共同研究者でもある八木勇治教授(生命环境系)が中心になって开発した「ポテンシー密度テンソルインバージョン」という手法を活用しています。断层の形状を仮定せず、観测された地震波形そのものから、地震を起こした断层の形状やそれに伴う破壊の成长过程を推定する手法です。

2018年にインドネシアで起きた「パル地震」(M7?6)に适用したところ、地震破壊が速く进んだり遅くなったりを繰り返す、シャクトリムシのように进む様式だったことが分かりました。震源域は南北约150虫3314;。直线的に见える断层の所々に小さな折れ曲がりがあり、破壊の进行を妨げたり、逆に速く进めたりする働きをしていました。复雑な断层形状と地震破壊の进展との関係を実测データから解き明かした世界初の成果でした。
また、大西洋の中央海岭にあるトランスフォーム断层で2016年に起きた「ロマンシェ地震」(M7?1)を同様に解析したところ、破壊の进行方向がブーメランのように途中で向きを変える特异な破壊様式だったことが明らかになりました。トランスフォーム断层とは、プレート同士が水平にすれ违っている部分のことです。形状は一见単纯ですが、地下构造などの影响で、ブーメラン破壊が起きたと考えられました。こうした知见から今后の地震の揺れを予测し、防灾に生かすことが大切です。

そんな発想が地すべり検出法开発につながった
奥脇さんは2020年3月から2年间、英リーズ大学に留学しました。同大は、地震がもたらす地殻変动を卫星で観测する研究で世界をリードしています。卫星の観测データと地上で観测した地震波形を组みわせれば、地震破壊の过程を従来より精度よく解析できます。コロナ祸の影响で外出すらできない日々もありましたが、现地の研究者と交流し、人脉を筑くことができたといいます。
奥脇さんが地震を専门に研究しようと思ったのは、筑波大学地球学类1年生のころ。入学后の学びで、地震や火山の喷火など地球がとても活动的なことを知ったからです。

実は、地震がなくても地表は常に揺れています。大気や海洋の动きの影响もあれば、地すべりの発生に伴う揺れもあります。奥脇さんたちは「地球の贫乏ゆすり」とも言えるこうした揺れの中から、地すべりの揺れを検出し、発生位置と时刻を特定する手法を开発しました。地すべりの揺れは、地震よりも微弱でゆっくりとした振动のことが多く、観测地点に揺れがいつ到达したのかを読み取りにくいことが问题でした。奥脇さんたちは、観测地点が近ければ地すべりで生じた揺れの波形が类似することを利用し、类似した波が各観测点に届いた时间差から発生场所と発生时刻を推定する新手法を编み出したのです。
2011年の台风12号が日本列岛を縦断した际の地震観测记録にこの手法を当てはめたところ、静冈県と叁重県で発生した地すべりを検出することができました。新手法は地すべり灾害の早期発见や灾害リスクの低减につながることが期待されます。
地震国日本には、膨大な観测データが残り、これからも増え続けて行きます。その中には気候変动と地球の贫乏ゆすりの関係など、未知の情报が隠されているかもしれません。そんな「宝の山」の発掘も楽しみです。
(文責:広報局 サイエンスコミュニケーター)