TSUKUBA FUTURE #073:犯罪データ分析から導くまちの安全?安心

システム情報系 雨宮 護(あめみや まもる) 准教授
统计上、国内で発生する犯罪の7割以上は窃盗です。その犯行场所の多くは、たまたま选ばれた场所と思われがちです。しかし、実际にデータを分析したり、捕まった犯人への闻き取り调査などをしてみると、住宅の构造や道路との位置関係、周囲の土地利用、住民の属性など、犯罪が実行されやすい条件に一定の倾向が见えてきます。そうした倾向を分析して事前に适切な防犯対策を讲じれば、そうした犯罪の多くは防げる可能性があります。そこで雨宫さんは、いつ、どんな场所で、どのような犯罪が起こりやすいか、それはなぜなのかを考えるために、犯罪に関する地理空间情报を集め、地図などの形で可视化しています。そうすることで、勘と経験に頼りがちだった従来の防犯活动も、根拠に基づいてより効率的に展开することが可能となります。

犯罪率のマッピング
日本では、顿狈础鑑定や毒物?爆薬の化学分析など、犯罪捜査に関连する研究は进んでいますが、空间的に起こる现象としての犯罪の特性を分析し、防犯に结び付けるための研究はまだまだメジャーではありません。その理由の一つとして、警察が蓄积している膨大な犯罪情报は非公开であり、それゆえに有効に活用されていないという状况がありました。しかし近年、一定のルールのもとで警察や自治体と大学がデータを共有する试みが加速してきました。雨宫さんは、いくつかの都道府県警と研究プロジェクトを実施し、犯罪の时间的?空间的発生倾向や、防犯カメラの効果検証、犯罪抑止のための方策の提案などに取り组んでいます。
データ分析を行えば、犯罪が起こりやすい场所をある程度は明らかにできます。しかし、そうした场所が特定されたとしても、防犯カメラを设置したり、警察が巡视するといった、外部からの介入のみに依存したのでは持続的な対策とは言えません。街の安全は、住人によって保たれるべきだというのが防犯まちづくりの基本的な考え方で、それを可能にするまちやコミュニティのデザインを考えるべきです。町内会や笔罢础などが自主的に子供たちの登下校を见守ったりする惯习は、日本のコミュニティならではの特徴です。そのようなボランティア活动を生かしつつも、それが过度な负担?责任にならないよう、ふだんの暮らしの中で自然な気遣いができる环境が理想です。日本では、特别な规制や设备がなくても、街の中に常に人目があるだけで、犯罪は防ぐことが可能です。たとえば、住民一人ひとりが、道端の草木の世话や、ジョギングをする际などに、あたりに少し目を配るだけでも防犯効果が见込めるでしょう。
雨宫さんは、警察と共同で犯罪データの分析を行う一方で、防犯まちづくりを社会に実装するために、ワークショップを开き、住民とともに実际に街を歩いて、いつ谁に何ができるかを议论する活动もしています。安全?安心な生活空间は谁もが望むものです。しかしそれは、唯一の価値ではなく、住环境やコミュニティに求められる要素の一つにすぎません。防犯対策の强化が、他の地域ニーズと相反することもあります。データ分析の知见に対して具体的に起こせるアクションは、地域によって异なりもします。行政や警察まかせではなく、どんなコミュニティを筑くか、そのために必要な労力や费用はどこまで负担?许容できるか、住民自身が能动的に考えることが、防犯対策の基本です。

防犯まちづくりを社会に実装するためのワークショップを开催したり、
住民とともに実际に街を歩いて议论する活动もしている
筑波研究学园都市は1970年代に造られたニュータウンです。当时の最先端の都市计画の考え方に基づいて、緑にあふれ、ゆとりのある都市として设计されました。ところが1990年代后半になると、街の骨格をなすペデストリアンデッキ(歩行者用道路)や公园で、恐喝などの犯罪が多発し、市民に不安が広がりました。计画的につくられた街であるはずのつくばでの问题に、当时大学生だった雨宫さんは疑问を抱きました。それが犯罪研究を志すようになったきっかけだそうです。近年は、安全?安心をキーワードにしつつ、空き家?空き地対策、障がい者や高齢者の居场所の研究など、研究テーマを広げています。これからも、「社会问题を工学的手法で解く」という社会工学の発想で、安全?安心なまちづくりに贡献していくつもりです。
文責:広報室 サイエンスコミュニケーター