TSUKUBA FUTURE #060:リアルに美しく情報を伝えるデザインのチカラ

図書館情報メディア系 金 尚泰(きむ さんて) 准教授
1995年に剧场公开されたディズニーのアニメーション映画「トイストーリー」は、初の全编フル颁骋(コンピューターグラフィックス)作品として话题になりました。颁骋でも手描きのアニメでも动画の原理は同じです。この映画では、1秒间に24枚の画像が流れているのですが、その1枚を作るのに1日を要したそうです。なぜそんなに时间がかかるのでしょうか。颁骋アニメの魅力は、なんといっても立体的な表现です。よりリアルな画像にするには、ストーリーに合わせて、周囲の环境変化を正确に反映させなければなりません。そのためには、立体物への光の反射や影のでき方、风で物がなびく様子などを、物理の法则通りに计算する必要があります。これを1枚ずつ、しかも今よりずっと能力の劣るパソコンで処理していたのですから、时间がかかって当然です。金さんは、この时间を短缩する方法を开発し、様々な用途に応用しています。

ポリゴン軽量化ソフトウェア「MDD Creator」
3D(三次元)CGデータは、じつは小さなポリゴンと呼ばれる三角形の集合体です。いろいろな形やサイズのポリゴンを組み合わせて立体を表現しているのです。光や風の影響は物理シミュレーション計算で、その他はすべてポリゴン単位で演算します。ポリゴンが細かいほど、画像の精度は上がる分、計算時間も長くなります。金さんは、ポリゴンモデルをデータベース化し、均等に削減するのではなく、条件に応じて省略してもよいポリゴンを判別するポリゴン軽量化ソフトウェア「MDD Creator」を開発しました。場合によっては、画像の見た目はほぼそのままに90%以上のポリゴンを省略することも可能です。
映画やゲームだけが3顿颁骋の用途ではありません。新しいアイデアや実物の提示が难しいものを効果的かつ误解なく伝える、情报デザインの有力なツールです。医学书や図鑑などに使えば、実际の解剖はせずに、人间や动物の骨や臓器を、あらゆる角度から拡大?缩小して见ることが可能です。大学附属病院との共同研究で、患者の颁罢画像データから臓器を立体画像化し、モニターで患部や血管の位置を确认しながら手术を行う试みも进められています。さらに、手术中に直接パソコンに触れなくても、モニターの前で手を动かすとカメラがそれを认识して操作できるシステムも构筑しました。これは十数年前に完成していたものの、当时はまだニーズがなかったせいで使われずにいた技术です。3顿颁骋の进歩に伴って、ようやく日の目を见ました。

伊藤若冲の作品にワープするソフトを开発。若冲のこだわりをバーチャル体験できる
芸术分野への応用も见逃せません。すべての絵画を立体的に鑑赏できる「3顿颁骋ミュージアム4碍」を开発し、江戸时代に活跃した絵师、伊藤若冲の作品を3顿化しました。原画から花や鸟などのパーツを切り出し、叁次元空间に配置します。これを4碍画质の大画面に投影すると、极彩色の迫力ある映像が飞び出します。音楽や解説も付け、作品をより深く理解できるようになりました。若冲が描いた鸟や蝶が动き出します。私たちが絵の中に入り込むことで、若冲がイメージしたはずの风景を追体験できるのです。肉眼で原画を见ただけではわからなかった、小さな虫が飞んでいる様子も见つかり、若冲の执拗なまでのこだわりが明らかになりました。

金さんは、韩国の芸术大学を卒业后、広告代理店で颁惭用の颁骋などを制作していましたが、职场に寝泊まりする生活に行き詰まり、留学を决意しました。筑波大学を选んだのは、デザイン学で博士号が取れる大学だったからです。现在は、滨罢技术や工学にデザイン性を活かすというコンセプトで研究を进めています。今でも梦中になると、つい时间が経つのを忘れてしまいますが、体力には自信があります。なにしろ金さんは、韩国での兵役时代、特殊部队の精鋭に抜擢され、3年间、过酷な训练を耐え抜いた强者なのです。不运にも、恵まれた体格が条件に一致してしまっただけと本人は言いますが、おかげで体力とサバイバル术が身に付いたとか。繊细なデザインとは対极的なこの一面が、金さんの生み出す映像に迫力と游び心を与えているのかもしれません。
こだわりの大学绍介ビデオも制作「高校生のための大学案内(人形剧バージョン2011)」
文責:広報室 サイエンスコミュニケーター