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TSUKUBA FRONTIER #035:知識と情報で人をつなぐ

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図書館情報メディア系 呑海 沙織(どんかい さおり)教授

PROFILE

京都大学での図書館員を経て、1998年7月より本学で、教育?研究に従事。博士(創造都市)。専門は、図書館情報学。研究テーマは、知識情報による共生社会の創出、認知症にやさしい図書館(Dementia Friendly Libraries)。主な著書に『高齢社会につなぐ図書館の役割:高齢者の知的欲求と余暇を受け入れる試 み』(学文社、2012)、『超高齢社会と図書館:生きがいづくりから認知症支援まで』(国立国会図書館、2017)など。現在、知識情報?図書館学類長。

认知症にやさしい図书馆づくり

図书馆というと、本を借りたり勉强をする场所、静かに过ごさなければならない场所、
というイメージを持つ人も多いでしょう。
しかし近年は、不登校の子どもたちやリタイアした人々の居场所としても
捉えられるようになっています。高齢化や多様化が进む社会の中で、
知识や情报を提供する公共の场である図书馆はどのような役割を担えるのか、
「认知症にやさしい図书馆」をキーワードに、その新しい在り方を模索しています。

多様化する図书馆の利用者

 図书馆が担う基本的な役割は、知识と情报の提供です。そこには、単に本や资料を集めて整理し、贷し出すというだけではなく、それに付随する、さまざまなサービスが含まれます。利用者も多様化しており、それに応じた対応が必要になってきています。
 中でも関心が高まっているのが、認知症支援。政策としても認知症対策が重点化される中、掲げられたアプローチが「認知症にやさしい図書館」です。「認知症にやさしい(dementia friendly)」とは、あらゆる人が認知症について知り、理解することで、認知症の人が「理解されている」「存在価値がある」「地域に貢献することができる」と感じることができる状態です。認知症の人に親切にする、というのではなく、認知症についての偏見や間違った考え方をなくすための知識や情報の基盤を作り、認知症の人も使いやすい環境をつくることが求められています。
 ですから、サービスの対象は、认知症の人やその家族などの支援者はもちろん、今现在は认知症との直接的な関わりをもたない人々も含めた全ての人に及びます。谁もがいずれは高齢になり、认知症になる可能性もありますから、みんなで认知症を理解し、そのために必要な知识や情报を持つこと、また、认知症の人やその家族が过ごしやすい场所を得ることが重要なのです。


さまざまな连携で支える

 とはいえ、认知症にやさしい図书馆は、図书馆の努力だけでは成立しません。これまでとは异なる配虑やサービスを整えなければなりませんし、そのための教育や训练も必要です。认知症の人にどう接したらよいのか、现场の戸惑いも闻かれます。そのような声に応える形で、まずはガイドライン作りから始めました。
 2017年に発表されたこの「认知症にやさしい図书馆ガイドライン」には、认知症に関して図书馆が提供すべきサービスだけではなく、认知症の症状、认知症の人やその家族との関わり方の指针も示されており、他国の参考にもなっています。図书馆情报学や老年看护学の専门家、図书馆员、认知症当事者など、さまざまな人々との议论を重ねて作成しました。ただ、认知症の症状は个人差が大きい上、配虑したつもりの応対が当事者の自尊心を伤つけてしまうことも分かってきました。こういったことを反映し、より役に立つガイドラインへの改订作业にも取り组んでいます。
 认知症に限らず、病気になると、自分で本やインターネットを调べ、その膨大な情报量にかえって不安になってしまう経験は谁にでもあるでしょう。そんな时に頼りになるのも図书馆です。新しいサービスとして期待されているのが、イギリスで実施されている「本の処方笺」プロジェクト。认知症诊疗にあたる医师やカウンセラーと连携し、认知症に関する直接的な情报だけでなく、関连する小説や絵本なども含めて、あらかじめ用意されたリストからその人の症状や心の状态、知りたい事柄に适した本を绍介するものです。日本の実情にあった本の処方笺を目指すべく、プロジェクトが进んでいます。


人々をつなぐ场所

呑海教授の研究室

 考えてみると、図书馆というのは壮大な意味をもつ场所です。外国で书かれたものや、何百年も前に书かれたものでも、本という形になっていれば、现在の日本で読むことができる、つまり、本は、离れた场所や过去の时代を生きた人と、私たちとをつなげてくれるものです。一册の本を通じてたくさんの人が结びつくことができる场所が図书馆なのです。
 インターネットが普及し、図书馆不要论が议论されたこともありました。しかし一方で、居场所としての図书馆が见直されています。従来のイメージを広げ、车に本を积み込んで各地を回る移动図书馆を活用し、屋外で、饮食をしながら、などさまざまなスタイルで本と出会える场所づくりが进んでいます。高齢者が子どもに読み闻かせをしたり、案内役としてロボットを活用するといった、新しいサービスも登场してきました。
 また、ヒューマンライブラリという试みも行われています。一人の人を一册の本とみなして、その人の人生を语ってもらうものです。もともとは、障害者や尝骋叠罢蚕などのマイノリティが、自分のことを理解してもらうための活动でしたが、认知症の人たちにも语れることはたくさんあり、そこから豊かな学びも得られます。そうやって、认知症の人もサービスの提供者になることができるのです。


思い出すことが力になる

 认知症の进行を防ぐ方法の一つに「回想法」があります。昔のことを思い出して言叶にすることで脳を活性化させるものです。そのときに、记忆を呼び起こすきっかけとして、本や絵叶书、音楽、古い道具、石けんの香りなどなど、いろいろなもので五感を刺激します。海外では、図书馆が、地域に残っているそういった资料を集めて、回想のためのキットとして贷し出しを行っています。これは、认知症の本人や支援者と一绪につくるサービスとしても有効で、日本でも同様の活动に向けた検讨が始まっています。
 また、回想するための手法として绵抜豊昭教授(本学図书馆情报メディア系)考案の「思い出し俳句」を提案しています。昔の思い出を俳句で表现し、図书馆で「句会」を开いて、みんなが作った俳句をお互いに评価します。评価といっても、文学的な良し悪しではなく、その句からどれだけ昔のことを思い出せたかがポイントです。个人の思い出でも、俳句になると、そこからそれぞれの记忆がよみがえり、句会は大いに盛り上がります。


谁もが居心地のいい図书馆へ

 かつて认知症は、痴呆症などと言われ、差别的に捉えられる侧面がありました。认知症になったら病院や施设へ、という対応も行われてきました。しかし昨今では、私たちの普段の暮らしの中で、认知症の人もともに过ごす、という考え方が世界的な流れです。交通机関、金融机関、学校など、あらゆる场面で、そのような考え方が取り入れられつつあり、図书馆の取り组みは决して特别なものではありません。敢えて认知症にやさしいということを掲げなくても、そのようなサービスが提供されることが理想です。
 図书馆は公共の场。谁でも目的を问われず、无料で利用することができます。「屋根のある公园」といわれるほど、自由で开かれた场所であるのが図书馆です。迷惑をかけてはいけない、と远ざかってしまうのではなく、むしろ、自分が认知症になった时に居心地のいい図书馆と考えると、これからの在り方が见えてくるはずです。


超高齢社会と図书馆研究会

呑海教授の写真

超高齢社会における図书馆について考える研究会として、2016年に発足。図书馆による高齢者を対象としたサービスにとどまらず、図书馆という「场」を活用した世代间交流、高齢者の生きがい支援、高齢者の知恵や経験を生かした図书馆サービス、认知症の人やその家族の居场所としての図书馆、认知症への理解を深めるための普及?启発など、超高齢社会における図书馆のあり方をともに考え、话しあい、実践している。
(鲍搁尝: )