TSUKUBA FUTURE #059:依存症?虐待の負の連鎖を断ち切りたい

医学医療系 森田 展彰(もりた のぶあき) 准教授
アルコール依存症と急性アルコール中毒は违います。依存症は、やめられない、止まらないことが问题なのです。森田さんの话では、その背景には心理的な要素と社会的な要素があるそうです。ある种の薬物やアルコールを摂取すると、脳内の快感ホルモンが活性化します。それにより、心の欠损している部分が埋められる体験が悪循环を招くのです。専门的には、自己治疗的に摂取しているという言い方もします。しかし、影响は本人に留まらず、周囲も巻き込んでいきます。暴力に発展することもありますし、家族がトラブルをもみ消すことで、依存が続けられるのを助けてしまうケースが多いそうです。
スポーツ选手のギャンブル依存も话题になっています。センセーションを求める性向は、スポーツ选手や超人的なことに挑戦する人にありがちだそうです。社会的なモラルに対する挑戦が刺激になるという侧面もあります。しかし、损失をギャンブルで取り返そうとするうちに、悪循环に陥ります。この场合も、周囲が金を贷したり、スキャンダルをもみ消すと、周囲の承认を受けたような形になり、どんどん深みにはまっていきます。

児童虐待の予防?早期介入システムを开発する研究も行っている
社会が依存症を増长しがちな背景には、依存症をモラルの问题としてとらえがちなこともあるそうです。「悪いことは言わないからやめなさい」と言われても、依存症患者にしてみれば、悪いと思ってもやめられないのが现実なのです。しかも本人は、自分にも他人にも嘘をつき、たいした问题ではないと否认しようとします。依存症が、人格やモラルの问题ではなく病気として认识されるようになったのは、1970、80年代のことだそうです。治疗にあたっては、本人と家族の自覚が欠かせません。
森田さんが薬物依存症の诊疗と研究に取り组むようになったきっかけは、駆け出しの精神科医として勤めた病院でした。先辈医师が薬物依存症治疗の病栋を立ち上げていたのです。それを手伝い、さらには异动してしまった先辈医师の跡を否応なく引き継ぐことになりました。苦労の连続でしたが、回復した患者さんの印象ががらりと変わる体験を重ねるうちに、やりがいを感じるようになりました。やがて、依存症が世代を超えて连锁する事例に気づきました。さらには、家庭内における暴力による支配、いわゆる顿痴(ドメスティック?バイオレンス)も世代间连锁すること、顿痴には薬物依存が伴っている场合も多いことに気づきました。薬物やアルコール依存の亲に困らされた子が长じて同じ依存症になる连锁も知られています。虐待の世代间连锁も知られています。被害者が加害者の侧になることで快感を覚えるようになり、依存症に発展するのです。

虐待の世代间连锁が生じる构図。虐待を受けて育ったことで受けたトラウマを物质の薬理効果で
晴らすうちに依存が成立する。さらに、被虐待経験や依存症をもつ人が亲になって子どもを虐待
する可能性が高くなる。
虐待は暴力だけではありません。相手を支配するために、细かいルール(おかずは必ず3品作れ、出来合いは使うな等々)を决めたり、生活费を制限したり、相手の落ち度を见つけては冷静に追い詰めていくタイプまでいるそうです。相手が谢っても効果はなく、むしろエスカレートしていきます。そうしたこともあって、顿痴では、被害者が自责的な场合が多そうです。教员の体罚依存では、自分の権威を夸示するため、手っ取り早い解决手段として暴力に依存していきます。
治疗は、薬物?アルコール依存の场合も、顿痴の场合も、まず本人の自覚を引き出す面接から始まります。そして心理疗法や、元患者(ピア)が関与する自助グループによる治疗などに移ります。顿痴の加害者には相手と适切なコミュニケーションをとるためのプログラムがあります。森田さんは、薬物依存の受刑者向け治疗プログラムの作成にもかかわっています。あるいは东京都教育委员会から体罚防止のための教员研修プログラム作成の依頼も受けました。依存症の治疗は、限られた専门病院が中心となります。そのため依存症患者の治疗に接する机会が少ないこともあり、この分野を志す医学生はほとんどいません。医学生に限らず、依存症に悩む患者の回復に立ち会えるやりがいのある分野として、ヒューマン?ケアの大切さを広く伝えていきたいと、森田さんは静かに情热を燃やしています。
文責:広報室 サイエンスコミュニケーター
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