【Nature Index Selection】トマトが実をつけるためのエネルギー代謝の仕組みを解明(Research highlights 2021年4月)
シュプリンガー?ネイチャーが運営するデータベースサイトNature Indexでは、毎月、主要な82ジャーナルの中から、本学所属の研究者による研究論文1報を、Research highlightsとして選出しています。2021年4月は、本件が紹介されました。
国立大学法人筑波大学 生命環境系 有泉亨准教授、篠崎良仁助教(現 東京農工大学 グローバルイノベーション研究院 特任助教)、江面浩教授、フランス国立農業研究所、ボルドー大学、神戸大学、九州大学、東京大学、帝京大学、理化学研究所、名古屋大学、千葉大学の研究グループは、トマトの子房において植物ホルモンによって制御された代謝の仕組みをモデル化することに成功し、果実の着果を支えるエネルギー代謝の全体像を明らかにしました。
着果は、花のめしべの子房が受粉をきっかけとして果実へと分化するプロセスです。トマトにおいては、受粉后に生成される植物ホルモンであるジベレリンの働きによって着果が促进されることが知られています。着果を始めたトマトの子房では活発な细胞分裂を伴う急速な成长が生じることから、着果を维持するためには、その成长を支えるエネルギー代谢が重要な役割を担うと考えられます。しかし、その全容や、受粉やジベレリンが代谢を制御する仕组みは明らかにされていませんでした。本研究では、ネットワーク解析や力学モデルの构筑といった数理的な手法により、トマト果実の着果におけるエネルギー代谢の仕组みを明らかにしました。
本研究で明らかとなった代谢の仕组みやその制御の键となる遗伝子の情报を活用することで、トマトをはじめとした果実の生产性を向上させる技术や育种素材の开発が进むと期待されます。
図 トマト野生型とprocera 変異体の着果
通常のトマト野生型では、開花0日目に受粉しためしべの子房は急速に成長しましたが、受粉しなかった場合は着果しませんでした。一方、ジベレリンの働きが活発となっているprocera 変異体では、受粉しなかった場合にも単為結果性によって着果が生じました。スケールバーは1cm。