TSUKUBA FUTURE #033:地図を読む?斜面崩壊?地すべりのメカニズムに挑む

生命環境系 八反地 剛(はったんじ つよし) 講師
水文学という分野があります。自然界における水の循环を扱う分野です。もう一つ、地形学という分野もあります。こちらは、地形の分类や成因を研究する分野で、どちらも自然地理学の一分野です。八反地さんが専门とする水文地形学は、その水文学と地形学の境界领域にあたります。
地形と水循环を足掛かりに、山地の斜面で発生する地すべりや崩壊など、さまざまな地形変化の仕组みを研究しています。地形と水というと不思议な取り合わせに闻こえますが、地形を形成する上で大きな影响を及ぼすのが水なのだそうです。雨水や川の流れも重要ですが、目に见えない地下水も大きな力を発挥します。それと砂や粘土などの土の性质が键を握ります。斜面崩壊は、一般には山崩れとも呼ばれます。伊豆大岛などでは、地表付近の表层が崩れる表层崩壊が多数発生しました。地表から地下1.2メートルまで缓んだ砂の层があり、さらにその下に水を通しにくい层があると、それらの境界部分を地下水が流れ、上の部分の表层が崩壊します。
それに対して地すべりは、缓い斜面をゆっくりと土砂の块がすべる现象です。倾斜が缓いことから、その上に住居があることが多く、大规模に崩れれば大きな灾害につながります。予防策としては、地下水を抜いたり、鉄杭を打ち込んですべりを食い止めることになります。じつは、地形図を読むと、地すべりがかつて起こった场所、起りそうな场所が见えてくるといいます。防灾科学技术研究所が作成した「地すべり地形分布図」は、空中写真の立体视によって地形を判読し、地すべりの痕跡である「地すべり地形」を抽出し、地図上にその形状と分布をマッピングしたものです。地すべりが动き出すきっかけは、降雨や雪どけによって地下水位が上昇したり、地震によって斜面が不安定化することです。

2013年10月の豪雨で崩壊した伊豆大岛の地すべり现场。海岸沿いに住宅地が见える。
地図を见てわかるというのは意外かもしれませんが、地名が手がかりになることもあるそうです。たとえば「石原」という地名は、土石流が堆积した扇状地と関係しています。土石流とは、川の流路を水とともに大量の土石が流れ下る现象です。あるいは、大雨と土石流に関する伝承が残っている地域もあります。ただし、新たに宅地开発された土地ではそうした伝承が残っていなかったりするため、先人の知恵に学べません。

地中水分の圧力を测定するテンシオメーターの本体を手にする
八反地さん(左)机の上の试料は伊豆大岛の崩壊现场の土

伊豆大岛の地中に埋设したテンシオメーターと
その测定値を记録するデータロガー(黄色い箱)
大きな山が崩壊することもあります。歴史的に有名な例は、长崎云仙の眉山(まゆやま)です。1792年、火山性地震がしばらく続いた后、5月21日(旧暦4月1日)に山体が崩れ、大量の土砂が岛原をかすめるように流れて有明海になだれ込み、高さ10メートルを超える津波が発生しました。その被害は対岸の肥后熊本にも及び、全部で1万5000人の命が夺われ、土砂灾害では日本史上最大の被害を出しました。「岛原大変肥后迷惑」 と呼び习わされてきた大灾害です。海に流れ込んだ土砂は、「流れ山」と呼ばれる小山となり、九十九岛(くじゅうくしま)という群岛として名残をとどめています。そのほか磐梯山や浅间山など、过去に崩壊した火山の周辺にも、「流れ山」がたくさん见られるそうです。

2009年7月の中国?九州北部を袭った集中豪雨で土石流が流れた
山口県防府市の谷の现场调査をする八反地さん(奥)と研究室の学生。
この谷の下流に国道があり、大きな被害をもたらした。
八反地さんは、子供の顷から地図が好きだったといいます。ご本人は记忆にないとのことですが、5歳の顷、住宅地図に见入り、その后も自分で地図を描いていたとか。中学生のとき、自宅の窓から台风の接近を観察し、驻轮场の屋根が风で飞ばされるのを目の当たりにして、気象学を志したそうです。进学した筑波大学では水文学と地形学に魅せられ、その境界领域を専攻しました。特に流路の地形に兴味をもったそうです。现在は、伊豆大岛と北茨城などで、表层崩壊と地下水の挙动を中心に研究しています。斜面は、いつか崩れる。しかし地形を読み、防灾知识を活用すれば、危険を回避することが可能となる。自然がダイナミックに挙动する仕组みの解明を目指すと同时に、土砂灾害対策への贡献も见据えた研究を推进していきたいと语ります。
文責:広報室 サイエンスコミュニケーター
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