大象传媒

テクノロジー?材料

TSUKUBA FRONTIER #018:材料の基本物性を探索する 着実な理解から導かれる革新的エネルギー技術

018-top.jpg

数理物質系 守友 浩(もりとも ゆたか)教授

东京大学理科一类に入学、工学部材料学科で学ぶも工学部になじめず、大学院理学研究科物理学専攻に进学し、理学博士を取得。日本学术振兴会特别研究员、名古屋大学大学院工学研究科助教授等を経て、2005年より现职。一贯して强相関酸化物の构造物性や物性开拓研究に取り组む。本学着任后は、物性実験家の视点からエネルギー物质科学の开拓に注力。エネルギー物质科学の深化と革新的デバイスの提案?実証を目指す。


不思议な构造の「プルシアンブルー」

 「プルシアンブルー」はその名の通り、浓青色の颜料です。300年ほど前にドイツで発见され、以来、絵画や陶磁器の彩色に使われてきました。日本でも、伊藤若冲や葛饰北斎など江戸时代に活跃した画家たちが使い始め、その美しい青色が评判になったと言われています。
 このプルシアンブルーが科学的に注目されるようになったのは、ここ数十年ほどのこと。特异な结晶构造が明らかになり、机能材料としての様々な可能性を示唆されたのです。それは、鉄イオンがシアノ基で立体的な格子状につながれた、ジャングルジムのような构造でした。さらに、鉄イオンの価数を変えたり、鉄を他の金属に置き换えるなど、组成を変化させた类似体にすると、磁性材料や电子材料としての性质が现れます。
 それらの新たに见出された可能性のひとつが、蓄电池の电极としての用途です。ジャングルジム构造の中の空间に、ナトリウムイオンやリチウムイオンを充填?放出することによって、电池として机能します。汎用的な电极材料ではありませんが、プルシアンブルーは构造がはっきりわかっていて、电池特性の発现メカニズムもシンプルですから、研究対象には最适です。より良い电池特性を得るために、材料としての基本的な性质(物性)をきちんと特定しようと、研究を进めています。

电池を学术的に突き詰める

 リチウムイオン二次电池(蓄电池)は、充电时间や电池容量、耐用年数などに优れ、モバイル机器から电気自动车まで幅広く普及しています。しかしながら、急速な产业化の一方で、充放电现象の基本的な理论や仕组みの解明は遅れています。性能向上や小型化?低コスト化のための开発竞争が激化する中、结果的に求められるスペックは得られていても、それは経験则よるところが大きいのです。
 大学の研究者としてやるべきことは、材料の持つ物性を突き詰めて理解し、様々な性能が発现する理由を明らかにすることです。そうすれば、望む性能に到达するための道筋も、理论的な限界も、自ずと见えてきます。电池に対する要求レベルはこれからますます高まりますから、结局はこういったアプローチが不可欠になるはずです。
 プルシアンブルーを电池材料として研究する例は多くはありません。しかし実用化を目指すというよりも、电池を学术的に捉えるにはむしろわかりやすい材料として、电池特性とそのメカニズムを详细に探るためのいろいろな実験を行うことが可能です。実际に、新しい知见が着実に蓄积されつつあります。

电池を超える新技术へ

 すでに大きな市场のある电池の研究は、产业界のニーズに沿った形で目标が定まっていきがちです。研究しやすいとも言えますが、オリジナリティを発挥するには物足りなさもあります。そこで、全く新しいエネルギー供给の概念の提案も试みています。それが「热発电」という技术です。数年前から温めていたアイデアを実験に移し、実现可能であることを示して、つい最近、発表しました。
 热発电は、电池の正极と负极の温度差(热エネルギー)を电気エネルギーに変换して起电力を得るというものです。蓄电池には充电が必要ですが、热発电では电极の间に温度差があるだけで発电が起こります。この温度差も、室温付近で数度の违い、つまり、工场の廃热や太阳热、さらには体温などでも十分。特别な环境や装置を用意しなくても电力が得られ、既存の电池技术を活用できるため、开発コストもそれほどかかりません。発电所の代わりとはいかないまでも、灾害时や紧急用のポータブル発电机などにも使える画期的な技术です。
 この研究でも、电极材料に用いたのはプルシアンブルー。热発电材料としても有望であることだけでなく、より大きな热起电力を得るための键となる物性や条件もわかってきました。越えるべきハードルはまだまだたくさんありますが、基本的な概念さえしっかり构筑することができれば、この研究を出発点として、実用化に向けた研究开発が一気に进むと期待されます。


クールに粘り强く

 実はこの热発电の研究は、発案してからしばらくの间、放置されていたテーマでした。当初、すぐに実験にとりかかり、考え方が间违っていないことは确かめました。しかしその时に得られたデータは、思ったほど良い数値ではありませんでした。どんなデータをどんな方法で调べるのが适切なのか、わからなかったのです。试行错误はしたものの、同じ実験でも、やるたびに违う结果が出るなど、研究を続けていく见通しが立ちませんでした。
 考えてみればこれは当然のことです。前例のないテーマなのですから参考になる资料も存在しません。しかも、热というのはそもそも精密に测定することが难しいものです。数年経って、绵密に设计した测定装置を使って、再び実験にチャレンジしたところ、最初のデータよりも格段に良い数値が安定して得られ、研究は前进しました。
 このような挫折と再开の繰り返しが研究のスタイル。行き詰まった时はいつまでも悩まずに一旦中断する、その见极めはとてもクールです。でももちろん、諦めるわけではありません。他のテーマに取り组みながら、気持ちと知识をリフレッシュし、再开のタイミングを待ちます。アイデアに自信があるからこそ、そうやって粘り强く探求し続けることができるのです。

データにこだわり、论文にこだわる

 物理学者として最も関心があるのは、材料の物性です。実用的かどうかではなく、新しい物性そのものが兴味の対象ですから、あらゆる材料が研究テーマになり得ます。プルシアンブルーの特殊な构造と物性の面白さに惹かれて、电池の研究を始めましたが、电池特性も、あくまでも物性のひとつとして捉えています。
 物性というのは数値で表すことができ、かつ再现性があること、すなわちデータの信頼性がなによりも重要です。研究室の学生に対しても、データを确定させることを、まず指导します。これは研究という営みの基本であり、研究成果としての论文を书く上での根拠となるものです。
 ですから、论文を书くことにもこだわります。データが确定でき、それに基づいて论理的な考察が展开できた証しが论文であり、それこそが研究の価値です。データを积み重ねて材料の物性を彻底的に理解し、応用の可能性や开発の指针を与える基本原理を提案する研究が、次の革新技术の拠り所を筑きます。


 

(文責:広報室 サイエンスコミュニケーター)