TSUKUBA FRONTIER #046:バイオアッセイで探る食資源の機能性

生命环境系
礒田 博子(いそだ ひろこ)教授
PROFILE
筑波大学生命环境系 教授/地中海?北アフリカ研究センター長、テーラーメイドQOLプログラム開発研究センター長、産総研筑波大食薬資源工学OILラボ長、国際農林水産業研究センター監事、文部科学省科学技術?学術審議会国際戦略委員を務める。2004年から地中海?北アフリカ研究センターで、地中海の食薬資源(オリーブ、アロマ薬用植物等)の機能性成分探索とメカニズム解析を進めている。専門は食品機能学、天然物創薬。
天然物のチカラを见つけ出す
伝统的に食べられてきた食材やハーブの中には、体に良い、薬効があるとされるものが数多く知られています。それらの効能の科学的なエビデンスを得るための键がバイオアッセイ。
そこに含まれる化合物が持つ机能を、生物材料を用いて评価する手法です。
これを駆使して、地中海や北アフリカ地域の食の秘密を探ります。
食资源が持つ机能性

ある疫学调査によると、地中海食を食べている人たちは、そうでない人たちよりも长生きで、また、动脉硬化やアルツハイマー病になりにくいそうです。これは、地中海食にふんだんに使われているオリーブやローズマリーなどのハーブ?アロマ类の薬効ではないかと考えられます。他にも、地中海地域には、天然の动植物に由来するさまざまな伝承薬があります。日本で言えば汉方薬のようなものかもしれませんが、薬というよりはもっとカジュアルに日常生活の中に取り入れられています。そうなると、この地域に古くから伝わる固有の食资源が持つ力について、がぜん兴味が涌いてきます。
こういった、その土地の人たちが経験的に培ってきた知恵の本质を、科学的に解き明かそうとすると、分子レベルでの解析が必要になります。食材に含まれる化合物を调べ、それらがどういう机能を発挥しているのかを、安全性も含めて、さまざまな细胞や病态モデルマウスを使って评価する、それがバイオアッセイ(生物検定)という手法です。
40种类以上のバイオアッセイを駆使して
研究室では40种类以上もの多様なバイオアッセイを扱っています。これらの评価系を駆使して、食资源や伝承薬に含まれる天然化合物の机能を调べていきます。すると、例えば、コーヒーの成分に老化予防(认知机能改善)、オリーブの成分に抗うつ作用、のような有効な働きが见つかったりします。こういった机能は、がんなどの深刻な病気の治疗というよりは、普段の健康を保つために有用で、だからこそ、応用范囲も広いと言えます。このことは医学分野の研究者からも注目されていて、実际にヒトを対象とした临床研究につながることもあります。これらの研究がシームレスに行えるのは筑波大ならではの利点です。
もちろん、天然化合物がなんでも良い、というわけではありません。しかし、とりわけ医薬の分野では、天然化合物をもとに新しい薬剤が开発される事例は珍しくなく、また、副作用を低减するために生薬が使われたりもします。食资源に含まれる天然化合物の働きをきちんと分析することは、创薬の基本となるだけでなく、食材が持つポテンシャルを引き出すことにもなるのです。
文理融合で地中海圏を研究する
これらの研究は、地中海地域の资源や文化について、现地の研究机関とも协働して、文理融合的に研究を行う、筑波大の「地中海?北アフリカ研究センター」の研究テーマの一つでもあります。食资源の他にも、サハラ砂漠の砂に含まれる高纯度のシリカを太阳光発电に活用したり、水资源の管理、さらに、新しい経済圏としての国际関係构筑など、実はこのエリアには、研究の种がたくさんあります。
伝承薬効の研究においては、现地へ行って调査をすることも大切です。その际、単に现地の人たちと意思疎通ができればよいわけではなく、言语や文化も含めていろいろな情报を得ることが不可欠です。センターには、地中海地域の文化や宗教などを専门とする研究者もいて、薬草を焚く仪式などについて现地语で详しく闻き取りをしつつ、さらに科学的な薬効も明らかになってくると、この地域についての理解がより深まります。
これまでの研究成果を社会実装へ
学术研究としては、さまざま评価系のエビデンスに関して、これまでに500报以上もの论文を国际的に発表してきました。この蓄积は他にはない强みです。これらの成果の社会実装を目指して、创薬や机能性食品の开発を企画?提案するベンチャーも立ち上げました。経営となるとなかなか大変なこともありますが、新しいビジネスモデルにするべく、日々奋闘しています。
ハーブやスパイスなどが持つ、味や香り以上の役割が分かってきたからこそ、こういった食材やその成分のより効果的な活用が求められます。毎日の食事で健康を保ったり、病気や老化が予防できるのなら、それはまさに、みんなのニーズ。高齢化社会における蚕翱尝(生活の质)の维持?向上に大いに贡献できるはずです。
筑波大学生命环境系 礒田研究室

食资源の机能性评価及び环境安全性评価において动物细胞工学を応用した40种类以上のバイオアッセイを用いて、新しい生理活性机能の探索やそのメカニズム解明に取り组む。研究テーマは、食资源の机能解析と有効利用、食品成分の机能性食品?化粧品のシーズ化、乾燥地植生の机能性分布とデータベース构筑、食品?环境安全性评価法开発など、多岐にわたる。乾燥地植生については、现地での调査と资料?情报収集も活発に行っている。
(鲍搁尝:)
(文責:広報局 サイエンスコミュニケーター)
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